漆の作品が出来るまで

漆の仕事は、胎(素地となる土台)から塗り、最後の蒔絵に至るまで、約20以上の工程があり、大変に手間と時間を要します。
研ぎや磨きの多い地道な工程は、全て手作業で丁寧にこなしていくことで、仕上がりはより美しく完成度の高いものとなります。
蒔絵とは、漆で絵を描き乾かないうちに金や銀の粉を蒔きつけ、付着させるという表現技法です。一度、漆を薄くコーティングし乾かし専用の研磨剤を使い、綿や手の平で磨き光らせ金属のような雰囲気を出します。簡単な平蒔絵から華やかで奥行きが出る研ぎ出し・高蒔絵などがあります。
漆が乾くには空気中の水蒸気が必要で、湿度を70%以上にした風呂(むろ)という密室にいれ、数時間~数日放置させますが、湿度が高すぎても表面の収縮や変色の原因にもなり、細やかな気配りをしなくてはなりません。季節によって左右され、冬場は気温も上がらず乾きにくく、梅雨時期は乾き過ぎて要注意です。
塗っては乾かし、また研いで塗っては乾かし‥同じような作業を繰り返すことで徐々に出来上がっていくのです。
仕上がるまで比較的単純なものでも数週間、凝ったものになると一ヶ月以上かかり、出来上がった時の喜びは格別です。かぶれてなどいられません。